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映画「永遠の僕たち」(2011)

あらすじ

 高校生のイーノック(ヘンリー・ホッパー)は学校には行かず、他人の葬式巡りをする日々。ある少年の告別式で知り合ったアナベルミア・ワシコウスカ)は、余命3カ月のガン患者。彼女と出会うまでは、ヒロシ(加瀬亮)という日本人の幽霊だけが彼の話し相手だった。2人を見守る幽霊のヒロシと臨死体験をしたイーノック、そして死が近ずくアナベル・・・。死によって結びつけられた彼らが、死とどう向き合いどう生きていくのか?そして愛とは・・・。

 監督は「MILK」、「追憶の森」のガス・ヴァン・サント

 

第64回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング上映作品。

 

 イーノック役のヘンリー・ホッパーは、以前紹介した映画「ランブルフィッシュ」に出演しているデニス・ホッパーの息子のようです。言われてみれば、確かに似ている。

 

イーノックだけに見える

 交通事故で両親を失ったイーノックは、その事故で臨死体験をしている。それ以来、ヒロシが見えるようになったようだが、ヒロシは彼にしか見えない。「見えるようになった」というよりは、「ヒロシが現れる」ようになったという表現の方が正しいかもしれない。両親を失ったイーノックを心配して現れるようになったと思えるからだ。だからイーノックだけに見えればいいのだと。

 

デート場所は・・・。

 出会った場所が葬儀場で、デートの場所は霊安室・・・。何ともおかしな話だが、2人にとってはそれが自然なのかもしれない。両親の死による喪失感から抜けられないイーノックは、他人の葬式に行っては死者の顔を眺めていたが、そうすることで両親の死と重ね受け入れようとしていたのだと思う。一方のアナベルも、近い未来に自分が行く(入る)ことになる霊安室を見ることとで、心の準備をしている・・・、そう思うからだ。

 

予告編

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ヒロシ

 ヒロシを演じるのは映画「硫黄島からの手紙」、TVドラマ「SPEC/スペック」に出演していた加瀬亮。私の好きな俳優の1人でもあるが、最後に読まれるヒロシの手紙は、特攻隊だったヒロシが恋人に宛てたもので、加瀬亮が実際に取材し書いたもののようだ。アナベルの服装は現代を生きる私たちにとっては普通なのだが、ヒロシにとっては「男のような格好」。そして日本と戦っていたアメリカの地で、日本製の三菱やトヨタの車が走っていることに驚くのも無理はない。

 

テーマは生と死と愛、そして和解

 テーマが生と死と愛であることは、予告編からも想像することが出来る。3人の微笑ましく、切なくもある物語。しかしそれだけではなく、「和解」も裏(?)のテーマとして描かれていると思う。イーノックは両親の死後、叔母と一緒に暮らしているが2人の仲は良くない。彼は些細なことでアナベルと喧嘩をし、彼女の担当医師には彼女を治せと苛立ちをぶつけ、そしてヒロシとも喧嘩をすることになる。そんな彼が最後には、これら全ての人と仲直りをしている。「個人」に視点をおいて見ればイーノックと他の人との和解だが、大きな視点で見ると日本とアメリカの和解と見ることもできる。前出の日本製の車についてのシーンもそうだが、日本人であるヒロシとアメリカ人のイーノックの関係についてもそうだ。かつて激しい戦いをした日本とアメリカの現在の関係をヒロシとイーノックを通して描いている、私にはそう思える。

 

 このログを書いていてヒロシを「ヒロシマ」と打って(書いて)しまう時があったが、原爆投下のシーンがあったからかもしれない。以前紹介した映画「フィフス・エレメント」でも原爆のシーンが出てきたが、今年5月にオバマ大統領が広島を訪問したニュースを思い出す。これについて「アメリカの戦争責任」の著者である竹田恒泰氏が動画をアップしているので、その動画を紹介したい。

 

オバマ大統領広島訪問演説について

 

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