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映画「凶悪」(2013)

あらすじ

 雑誌「明朝24」の編集部に届いた死刑囚からの1通の手紙。手紙の送り主である元暴力団の須藤(ピエール瀧)に面会し、取材をすることになった記者の藤井(山田孝之)。須藤が藤井に話した内容は、まだ誰にも話していない3件の事件についての告白だった。これらの事件の首謀者とされる謎の人物「先生(リリー・フランキー)」。須藤との面会を繰り返す藤井は、次第に取り憑かれたように取材にのめり込んでいく・・・。

 

 

実際にあった事件がモデル

 この作品も「冷たい熱帯魚」と同様、実際にあった事件を基に作れた作品だが、趣がかなり異なる。「冷たい熱帯魚」の登場人物は風変わりで、かなり個性的なキャラクターばかり。事件(物語)よりも人物に焦点を当てた描写を中心に物語が進んでいく感じだった。それに対して「凶悪」は、事件を淡々と描写し物語が進んでいく。この「淡々」と描かれるところにピエール瀧が演じる須藤と、リリー・フランキーが演じる先生・木村の不気味さや恐ろしさが表現されている。

 

現実逃避

 認知症の母親を妻(池脇千鶴)に押し付け、現実から逃げるように取材にのめり込んでいく藤井は、木村が逮捕されることに執念を燃やしていく。

 一方、死刑囚である須藤はキリスト教に入信、自分が殺した人たちのために祈りを捧げていると言う。裁判では「神様が私に生きて罪を償いなさい」と言ったとも。須藤の言動は死から逃れることのできない人間の、ある種の現実逃避とも取れる。

 

木村との面会

 最後に藤井が木村(先生)と面会するシーンで物語は終わる。木村が藤井に言う、「1つ教えてやろうか」と。藤井の本心を見抜く木村のセリフは印象的だ。

 

「普通」について考えてしまう・・・。

 「村上龍文学的エッセイ集」を読んでから(紹介してから)「普通」という言葉が使われていると「この人が言う普通とは何だろう?」と、考えてしまうようになった。この作品では認知症の義母の介護に疲れた藤井の妻が、夫に対し「あなたと普通に生活したいだけ」と言うセリフがある。この場合、彼女の言う「普通」とは認知症の義母がいない、2人だけの生活のことを指す。では、認知症の義母がいる生活は「普通ではない」のだろうか?高齢化が進み、寿命が延びた分だけ認知症を発症する人の割合も増えたのではないかと思われる。私の住む地域では、行方不明の高齢者がいる(見つかった)ことを知らせる有線放送が流れることは、珍しいことではない。作中では認知症の義母は施設に入れることになるのだが、施設に入れるだけの経済力があることが「普通」ということなのだろうか?単なる「願望」という気もしてくる。考えれば考えるほど分からなくなってくるのが、この「普通」という言葉だ。

 

視聴可能な動画配信サービス(追記:9月18日)

 本作品は、現在Huluで配信中。配信期間の記載がないため、配信終了日は不明。2週間の無料お試し期間あり。(2016年9月18日時点での配信情報ですので、現在は配信が終了している場合もあります。詳細は Hulu  の公式ホームページにてご確認下さい。)

 

予告編

 

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