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映画「始皇帝暗殺」(1998)

あらすじ

 刀匠の一家皆殺しの依頼を受けた荊軻(ケイカ:チャン・フォンイー)。刺客として有名だった荊軻だが、刀匠の娘の最期を看取ったことが切っ掛けとなり、人を殺さなくなる。天下を統一し、初代皇帝となることに執念を燃やしている秦の国王、政(セイ:リー・シュエチエン)。そして趙の人質であり、政の愛妾でもある趙姫(チョウキ:コン・リー)。彼女は政の天下統一を叶えるために、刺客を探し送り込もうとするのだが・・・。2人の男が趙姫を間に、運命の対決をするに至るまでの物語。

 原作は、荒俣宏の小説「始皇帝暗殺」。

 

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チェン・カイコー監督

 この作品では監督だけでなく、宰相の呂不韋(リョフイ)役で出演もしている。チェン・カイコー監督の作品を初めて観たのは「さらば、わが愛覇王別姫」だった。非常にいい作品だったため、それから彼の作品を観るようになった。

 映像的にも非常に魅力があるが、人の内面的な部分の描き方も私が好きな理由の1つだ。登場人物の心の変化や、異なる感情が混在する複雑な心情、これらが観ているときに作品に引き込まれる要素なのかもしれない。

 この作品で言えば、主要人物である政・趙姫・荊軻の3人の心の変化がそうだ。民を救うため高い理想のもと天下統一を目指した政が、大勢の民を殺すこととなる。政の語る理想の国・王の姿に心を動かされ、彼のため祖国である趙のために動く趙姫。しかし理想とは程遠い結果になりつつある中、彼女の心は政から荊軻へと移っていく。刺客として過去に大勢の人を殺した荊軻が人を殺さなくなり、そして再び刺客となる。この3人に限らず、周りの人物の描写も素晴らしい。

 

今までに観た作品

 チェン・カイコー監督の作品は何本か観ているが、その中でも特に好きな作品が以前紹介した映画「さらば、わが愛/覇王別姫」と、この「始皇帝暗殺」の2作品だ。他にも「PROMISE 無極」、「人生は琴の弦のように」など好きな作品がまだあるので、機会をみて紹介したいと思う。

 

予告編

動画配信サービス「dTV」ならテレビ、パソコン、タブレットでも見放題

 

視聴可能な動画配信サービス(追記:9月18日)

 本作品は、現在dTVで配信中。配信期間の記載がないため、現時点では配信終了日は不明。31日間の無料お試し期間あり。 

 

時代背景など

戦国時代の7

 この作品は戦国時代の紀元前3世紀を描いている。7国とは、秦(しん)・韓(かん)・燕(えん)・趙(ちょう)・楚(そ)・魏(ぎ)・斉(せい)を指す。趙・魏・韓は、紀元前5世紀に晋(しん)が滅亡し、分裂して出来た国。

 

合従連衡(がっしょうれんこう)の語源

 「合従連衡」とは、時々の状況に応じて各勢力が結び付き、また離れる様子や、そのかけ引きのことを言うが、その語源は戦国時代の戦略にある。

 「合従」は強大な秦に対抗するため他の6国が組むこと、「連衡」は秦が他の6国それぞれと組むこと。どちらも戦いに勝つための策で、秦は「連衡」により「合従」を封じ込めることが出来る。

 

儒教の教え

 韓の使者が秦に来たときの会話の中に、儒教の教えが色濃く現れている。

 韓の使者:「韓王は陛下を父、秦を宋主と仰ぎ・・・を献上し、永遠の臣服を誓います。」宰相の呂不韋:「韓を滅ぼすのは容易だが、六国なしには天下はない。四海の内は皆兄弟という、だが長兄は秦だ。秦は仁義を以って天下を治めるが、弟が兄に逆らえば容赦はせぬ。」といった具合だ。

 

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