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映画「インファナル・アフェア」3部作

インファナル・アフェア(原題:無間道)

 2002年香港公開、2003年日本公開。

 2人の男の潜入生活における苦悩と対決を中心に描いている。 

あらすじ

 組織のボスであるサム(エリック・ツァン)の命令で、警察に潜入するため警察学校に送り込まれたラウ(アンディ・ラウ)。一方、警察学校で潜入捜査官としての素質をウォン警視(アンソニー・ウォン)に見込まれたヤン(トニー・レオン)。ラウは警察に、ヤンはサムの組織に潜入。ある日大きな取引があるというヤンからの情報を得て、警察は一斉検挙に乗り出す。しかし警察の情報が漏れ、検挙は失敗。このとき警察とサムの組織の双方に内通者がいることが分かり、お互いのスパイ探しが始まる。ヤンとラウは約10年にも及ぶ潜入生活を経て、対決のときを迎えることになる。

 

 

対照的に描かれる2人

 ラウは警察官として順調に出世し、マリーという妻もいる。2人の幸せな新婚生活は始まったばかりだ。それに対してヤンは精神的に追い詰められている状態で、傷害事件を繰り返し精神科へ通う日々。ヤンにとっては精神科に居るときが、唯一安らげる時間と空間なのだ。物語が進むにつれ、ラウは安定した幸せな生活を維持したいと思うようになるが、マリーに自分の正体がバレその生活が崩れていく。一方ヤンは、精神科医のリー(ケリー・チャン)を通して僅かな光を見いだしていく。

 

予告編

 

インファナル・アフェア無間序曲(原題:無間道Ⅱ)

 2003年香港公開、2004年日本公開。

 前作の過去にさかのぼった1991年から1997年の香港返還までを1991年・1995年・1997年の3部構成で描いている。

あらすじ

 1991年、香港の尖沙咀(チムサアチョイ)を牛耳る大物クワンが暗殺される。クワンの配下にある組織のボス4人は、これに乗じて離反を目論む。しかし新参者の5人目のボス、サムだけは状況を冷静に見つめる。クワンの後を継いだ次男のハウ(フランシス・ン)は、4人のボスの弱みを握ることで新たな大ボスとしての地位を確立。警察学校の優等生であるヤン(ショーン・ユー)は、クワンの死により彼の私生児であることが発覚、退学処分となる。ヤンとラウ(エディソン・チャン)はこの時期から潜入への道を歩むこととなる。

 1995年、サムの子分のキョンと親しくなったヤンは、裏社会に溶け込み始めていた。ハウから声がかかり、彼の仕事を手伝うことに。ラウもまた警察官として溶け込み、警察内部を観察する日々を送る。4年前に父を殺した犯人についての証拠を掴んだハウ。父の命日に合わせ復讐劇が始まる。

 1997年、香港返還後の表社会への進出を目論むハウだが、警察はそれを阻止するかのように彼を殺人事件への関与の容疑で逮捕しようとする。検察側の証人となるのはサム。ハウとサムの生き残りをかけた対決が始まる・・・。

 

 

警察VSマフィア、マフィアVSマフィア

 前作が2人の潜入者の心理面を中心に警察とマフィアの対決を描いていたのに対し、本作ではアクションや血みどろな描写により各組織の抗争を描いている。また、サムの人の良さと見た目からくる温厚な印象とは逆に、冷静でしたたかな一面もうかがえる。

 

2人のマリー

 全ての発端となったクワンの暗殺を計画したサムの妻マリー(カリーナ・ラウ)。物語はクワンの暗殺をラウが実行し、マリーに会うところから始まる。そして最後はラウの後の妻となるマリーに出会い終わる。

 サムの妻マリーに想いを寄せていたラウだが、本作での彼女との関係が後の彼に影響を与えるほど、心に暗い影を落とすこととなる。

 

予告編

 

インファナル・アフェア終極無間(原題:無間道Ⅲ 終極無間

 2003年香港公開、2005年日本公開。

インファナル・アフェア」完結編。ヤンの死後も警察内部に潜伏し続けているラウのその後の人生を描いている。

あらすじ

 ヤンの殉職から10カ月後。エレベーター内のカメラが壊されていたことから事件の検証が難航していたが、ラウの証言が全面的に認められる。ラムはサムが送り込んだスパイで、ヤンを殺害したため、やむなく射殺という証言内容だ。あの事件以来、眠れない日々を送るラウ。ラムから聞き出した情報では、あと5人サムのスパイが潜入しており、証拠となるテープが存在する。スパイとテープを探し出すことに取り憑かれていくラウ。ある事件を切っ掛けに、疑いの目は保安部のヨン(レオン・ライ)へ。

 その一方でヤンを担当していた精神科医リーのPCを盗み、ヤンのカルテを読むのだが・・・。

 物語はヤンの殉職数カ月前の出来事と現在を織り交ぜながら進んでいく。

 

 

壊れていくラウ

 ヨンの行動を監視するため隠しカメラを設置、部屋に引きこもりカメラから目が離せなくなっていくラウ。幻覚に幻聴、そしてマリーとは離婚調停中・・・。やがて彼の精神は壊れていく・・・。ヤンのカルテを読んでから、彼の心はヤンに取り込まれてしまったかのようだ。1作目のラストシーンで、警察学校を去るヤンを見つめる生徒たちに向けられた教官の言葉「ああなりたいか?」。それに対するラウの答えが、ここに現れているように感じる。

 

予告編

 

インファナル・アフェア:無間道」の意味

「インファナル(Infernal)」は「地獄の」、「アフェア(Affairs)」は「事柄」の意。つまり「地獄の事柄」。「無間」は「無間地獄(=阿鼻地獄)」の略で、八大地獄の8種の地獄の中で最も苦しい地獄のこと。四道*1の1つに「無間道」というのがあるが、「インファナル・アフェア」の意味や作品の内容から考えると「無間地獄」を指していることが分かる。つまり「無間道」は「地獄の道」ということになる。

 

「涅槃経 第19巻」からの引用

 1作目の初めに「涅槃経 第19巻」からの引用文が示される。

八大地獄の最たるものを「無間地獄」という。“絶え間無く責め苦にあう”ゆえに、そう呼ばれる。

 このように3作目の初め以外は、3作通して初めと終わりに仏教経典からの引用と思われる文言が示されており、登場人物たちの境地を表している。映像も仏の顔から鬼の顔へ移り、炎やエレベーターを重ねることで地獄への道のりをイメージさせる。また音楽もそのイメージを膨らませる。

 聖書を引用した作品を見かけることは珍しくはないが、仏教経典がこのように引用された作品は少ないのではないだろうか?

 

3作で1つの作品

 シリーズ化された作品の中には、1作で完結する単品の集合であるものもあるが、本作品は1つの作品を3部で構成したものだ。連続ドラマの見逃しがあると、ドラマの全体像が分からなくなり面白さが半減するように、この作品もどれかが抜けると良さが半減してしまう作品だ。

 

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*1:四道:完全な悟りを開くに至る4つの道(段階)のこと。「無間道」は第2の「煩悩を断ち切る」段階を指す。