映画「LUCY/ルーシー」(2014)
あらすじ
知り合って間もないリチャードから、カバンをチャン(チェ・ミンシク)に届けて欲しいと頼まれるルーシー(スカーレット・ヨハンソン)。怪しげな依頼を断るルーシーだが、手錠をかけられ強制的に運び屋をやらされるハメに・・・。そしてチャンの運び屋として「ブツ」を腹部に埋め込まれることになる。その「ブツ」が体内で漏れ出したことから彼女の脳は覚醒し、人智を超えた能力を発揮し始める。しかし人間的な感情が消えていき、知識が脳内で炸裂する状況を止められないルーシーは、脳科学者のノーマン教授(モーガン・フリーマン)に助けを求める。
監督は映画「ニキータ」、「レオン」、「フィフス・エレメント」のリュック・ベッソン。
アニメ「AKIRA/アキラ」が観たくなる
観たい観たいと思いつつ、後回しになっていた本作品をやっと観ることが出来た。予告編を見てアクション色の強い作品だと思っていたのだが、非常に哲学的な内容で奥が深い作品だ。内容的にも画的にもアニメ「AKIRA/アキラ」と通じるところがあり、観終わったときに「AKIRA/アキラ」が観たくなった。「フィフス・エレメント」でも、アニメ「幻魔大戦」に画的に似ているシーンがあり、邪悪な知的生命体の演出も「幻魔大戦」に似ている。ベッソン監督は大友克洋のファンなのだろうか?
予告編
映像と音楽
数日前に紹介した園子温監督の「ヒミズ」で使用されている曲が、本作品でも使用されている。同じ曲であることに直ぐに気付いたのだが、「ヒミズ」の映像が頭の中を流れていき、その曲の流れるシーンだけ内容が頭に入らなかった。「ヒミズ」の印象が強いということもあると思うが私の場合、映像と音楽はセットで記憶しているため「ヒミズ」の映像を切り離すのに少し時間がかかった。今でもこのシーンは客観的に判断することが出来ず、それが残念だ。曲名を調べ、モーツァルトの「レクイエム」という曲だと分かったので、紹介したい。
モーツァルト「レクイエム」
時間の始まりと終わり
宇宙の果てはどこにあるのか?死んだらどうなるのか?時間はいつ始まり、いつ終わるのか?こんな答えのない問題について、誰もが1度は考えたことがあるのではないだろうか?本作ではこれらの中でも特に時間に焦点を当てて、この問いに応えようとしているように思える。人類最初の女性の名前が「ルーシー」である理由は?細胞分裂から始まる映像が、細胞が融合して終わる意味は?彼女が「至る所にいる」とは?等など・・・、想像力が刺激される要素が多い作品である。
視聴可能な動画配信サービス(追記:9月18日)
本作品は、現在Huluで配信中。配信期間の記載がないため、配信終了日は不明。2週間の無料お試し期間あり。(2016年9月18日時点での配信情報ですので、現在は配信が終了している場合もあります。詳細は Hulu の公式ホームページにてご確認下さい。)
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映画「FRIED DRAGON FISH/フライド・ドラゴンフィッシュ」(1996)
あらすじ
誕生日プレゼントに1匹の魚をもらったナツロウ(浅野忠信)。彼が欲しかったのは「スーパーレッド」と呼ばれる魚で、プレゼントされた魚は別のものだった。データバンク会社のオペレーターであるプー(芳本美代子)は、1カ月間だけ探偵事務所へ派遣される。そこで社長の相田(酒井敏也)を指導するのだが、依頼人の情報を入力中にエラーが発生。依頼人の名前はトーマス・アーウィング。生物学者である彼の研究施設から1匹のドラゴンフィッシュがいなくなり、それを盗んだ人物としてトビヤマ(大口広司)の名が挙げられている。相田は盗まれたドラゴンフィッシュが裏ルートで時価1千万円すると言われる「スーパーレッド」だとにらんでおり、それを聞いたプーは事件に首を突っ込むことに。そして1匹の魚をめぐり事件は思わぬ方向へ・・・。
監督は「undo」、「スワロウテイル」、「リリイ・シュシュのすべて」、「ヴァンパイア」の岩井俊二。
深夜ドラマ「La Cuisine」
この作品は1992年~1993年に深夜放送されたTVドラマ「La Cuisine(ラ・キュイジーヌ)」全24話の最終話として作られ、放送された作品のようだ。1996年に「PiCNiC」と同時上映という形で劇場公開されている。正式なタイトルは「FRIED DRAGON FISH THOMAS EARWING'S AROWANA」のようだが、アロワナ(AROWANA)の英名はドラゴンフィッシュ(DRAGON FISH)。
1匹1千万円の魚?
前回紹介した映画「冷たい熱帯魚」の中でも1匹1千万円の魚が「ビンタン」の名で出てきた。実際にはビンタンではなく赤いアロワナだが、「スーパーレッド」と呼ばれるものなのかどうかは分からない。「冷たい熱帯魚」も「FRIED DRAGON FISH」も熱帯魚マニアにとっては1千万円出してでも欲しい魚としてではなく、ビジネスとしての初期投資の意味合いが大きい。
映画で活躍する俳優たち
約20年前の作品で作中に出てくるPCや携帯電話、服装など時代を感じさせるデザインだが、物語や人物設定、ストーリー展開は時代に関係なく楽しめる内容だ。出演者は浅野忠信、光石研、田口トモロヲなど映画を中心に活躍されている方々で、若かりし日の姿が収められている。酒井敏也の頭が髪で「ふさふさ」だったり、別の意味(?)でも貴重な映像を楽しむことが出来る。
浅野忠信が演じるナツロウは各国を転々とする殺し屋。日本に不法入国してから部屋の外へは1歩も出ていない。ナツロウの冒頭と最後のシーンでの冷たい目が印象に残る。私は切れ長の目をした俳優が好きなのだが、彼もその1人だ。特に若いころの浅野忠信の目はたまらなく好きだ。
映画「ニキータ」的な要素
最初のタイトルに入るまでの映像や音楽の雰囲気が少し映画「ニキータ」に似ていると感じた。「パクリ」という意味ではなく「風味」がする、といった程度だ。他にもユーモアなど「ニキータ」好きの私の気持ちをくすぐる要素があり、「ニキータ」が好きな人は、きっとこの作品も気に入ると思う。
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映画「冷たい熱帯魚」(2011)
あらすじ
小さな熱帯魚店を営む社本(吹越満)は、妻の妙子(神楽坂恵)と娘の美津子(梶原ひかり)と3人暮らし。妙子との関係は既に冷え切っており、前妻の子である美津子と妙子の関係も折り合いが悪い。幸せな家庭を夢見る社本だが、現実は程遠い。ある日、美津子が万引きをしたことを切っ掛けに、社本は事件に巻き込まれることになる・・・。
予告編 を下記より見ることが出来ます。
インスタント食品、しかし・・・。
冒頭で夕食を作るシーンがある。インスタントのご飯をレンジでチンし、みそ汁も即席カップにお湯を注ぐだけ。しかし、次の食事のシーンでは親子3人ご飯は茶碗で、みそ汁はお椀で食べている。それが何とも不気味で異様に感じた。見た目だけの食事が、家族という形だけで中身の伴わない社本家の姿を投影しているかのようだ。
Amazon Gold
万引きした美津子を救った村田(でんでん)が経営する熱帯魚店「Amazon Gold」。社本の店とは規模が違い、かなり大きく魚の種類も豊富だ。店内を案内する村田、目を輝かせ店内を見る妙子と美津子、社本に声をかける村田の妻愛子(黒沢あすか)。調子のいい村田のペースで話が進み、社会復帰という名目で美津子が村田の店でバイトをすることが決まる。
犯罪が似合う魚
「Amazon Gold」で、ひと際目を引くのが赤いアロワナ。村田は詐欺のカモである吉田(諏訪太朗)に「ビンタン」という高級魚として説明している。実際に「ビンタン」という名の魚がいるようで、その動画を見付けたので興味のある方は下記の動画をご覧下さい。赤いアロワナは予告編に出てきます。
このアロワナ(英名ドラゴンフィッシュ)を他の作品でも見たことがある。映画「FRIED DRAGON FISH/フライド・ドラゴンフィッシュ」では密輸入に関係する重要な魚として、アニメ「PSYCHO-PASS/サイコパス」ではハッカーのチェ・グソンと殺人者の御堂が電話で話しているシーンで登場する。「冷たい熱帯魚」を含め、いずれも犯罪が絡む作品・場面で映し出されている。アロワナの中には絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約で取引が禁止されている種類のものがいるため、「犯罪のネタとして使える」という理由もあると思うが、それだけではなく肉食という性質や見た目も「犯罪がお似合い」なのだ。犯罪の香りがする場面でクマノミやグッピーのような可愛らしい魚が映し出されたのでは、締まりがなくなる。
熱帯魚 ビンタン
何ともグロい映像
この作品は実際にあった連続殺人事件を基に作られている。実際の事件の詳細については触れないが、作中での「ボディを透明」にする作業の描写は、遺体は風呂場でバラバラにし骨と肉とを分ける。骨は焼却後その灰を山中で撒き、肉は川へ捨てる。村田「あとは魚さんが食べてくれる。」
グロい映像が苦手な方は、「暑い夏に涼しそうなタイトルだから」といって観てしまわないようご注意を!決して観てはいけません!
「ヒミズ」と重なる出演者たち
本作品の主役である吹越満をはじめ、神楽坂恵、でんでん、黒沢あすか、渡辺哲(村田の顧問弁護士役)、諏訪太朗といった具合に主要メンバーは「ヒミズ」にも出演している。園子温監督のお気に入りの俳優たち?
視聴可能な動画配信サービス(追記:9月18日)
本作品は、現在HuluとU-NEXTで配信中。Huluでは2週間の無料お試し期間が、U-NEXTでは31日間の無料お試し期間があります。(2016年9月18日時点での配信情報ですので、最新の配信状況は Hulu と U-NEXT の各サイトにてご確認下さい。)
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